研究概要 |
小型魚類であるゼブラフィッシュは優れたモデル動物として盛んに用いられているが、近交系がなく、この点が遺伝学を適応する上で大きな弱点となっている。そこで本課題ではゼブラフィッシュの近交系の樹立を目指すと共に、ゼブラフィッシュにおける近交退化の強さを見極めることを目的としている。 近交系は野生型のIndia系統およびTubingen系統の2系統から樹立を試みている。当該年度には、Tubingen系統において10〜13世代目、India系統において11〜13世代目の兄妹交配を行った。India系統では、成長が若干遅くなっており、個体のサイズも小さくなる傾向が認められた。しかし、問題なく継代できている。Tubingen系統は、加齢と共に心臓付近の肥大化が起きやすく、世代を経るごとにより若い個体でも肥大化する傾向にある。さらに、これまでに作成したTubingen系統の13世代目ペアから得た胚は、全て発生異常を示した。ここにきて、近交退化が現れている感がある。対策として、13世代目のペア数を増やすと共に、11, 12世代相に戻っての採卵・飼育を開始したところである。また、コンタミネーションの可能性を排除しつつ近交系化の進み具合をモニタリングするための、遺伝マーカーセットを選出し終えた。このマーカーセットに対して2系統の9世代目それぞれ10個体の遺伝子型を調べ、少なくとも9世代相の時点でコンタミネーション等が起きていないことを確認した。また、90%以上のマーカーで10個体とも同じ遺伝子型のホモとなっており、順調に近交系化が進んでいることが伺えた。
|