研究概要 |
本研究は免疫不全NOGマウスへヒト造血幹細胞を移入する事でヒト免疫系を再構築し、このヒト化マウス内でヒト型IgG抗体を産生させる事を目的としている。研究期間内ではヒト免疫系に重要なヒト遺伝子をNOGマウスへ導入したトランスジェニックマウス5系統(hIL-7, hLymphotoxin, hCXCL13, hIL-6, hIFNg)の作出を試み、うち3系統(hIL-7, hLymphotoxin, hIL-6)について導入遺伝子の発現を確認した。hLymphotoxin Tgマウスについてはヒト造血幹細胞移入実験を行っており、またhIL-6TgマウスについてはNOGマウスとの交配により遺伝子背景をNOGマウスへ置換中である。今回我々はヒト免疫系を再構築したhIL-7Tgマウスを用いて得られた成果について報告する。まずヒト造血幹細胞を移入したhIL-7Tgマウスにおけるヒト細胞の生着性およびヒトT, B細胞の分化能についてフローサイトメトリーにて解析を行った。その結果、hIL-7Tgマウスとコントロールのnon-Tgマウスとの間で有意な差は認められなかった。次に分化したヒトT細胞を分離し、in vitroで抗CD3/CD28抗体により刺激した後の増殖能を比較したところ、hIL-7Tgマウス由来ヒトT細胞の有意な増殖性亢進が認められた。本結果はIL-7シグナルがヒトT細胞の増殖、維持に重要であり、ヒト化マウスにおいて外来抗原認識後に起こるT細胞のクローナルな増殖を促進させる可能性を示唆する。このことから、hIL-7Tgマウスが従来に比べてより正常に近いヒト免疫系再構築マウスとして有用なツールになり得る。現在hIL-7TgマウスへT依存性抗原を免疫し、抗原特異的ヒト型IgG抗体の作製を行っている。
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