研究概要 |
体内補助循環用定常流血液ポンプは10^4以下の低レイノルズ数流れかつ拍動流下の特殊な条件で使用されるため,従来のポンプ設計理論による羽根車では性能が十分に発揮されない.このような羽根車に適した翼形の開発を行うため,本年度は以下のように取り組んだ。まず,低レイノルズ数流れの翼の流体力特性を従来の10^5〜10^6オーダーの特性と比較するため,プロペラ駆動方式の小型回流式水槽を製作した。主流速度0.2〜0.5m/sおよび翼弦長20mmに基づく4×10^3〜1×104の低レイノルズ数流れの任意の迎角における翼に作用する流体力が計測できる。翼形模型設置のステージ部はわずかな変位を考慮して測定部底板と0.5mm程度の間隙を保って設置するようにしたが、この部分の微小流体力の計測に影響を極力与えない漏水対策のために多大な時間を要し、本年度は定常流の翼の流体力基本特性の取得にとどまった。また、翼周り流れの可視化と定量データの取得のために非圧縮非定常層流解析および1Hz程度の周期で変化する速度規定条件による拍動流を模擬したNACA0012翼周り流れの数値解析を行った。定常流と拍動流の解析結果の比較より拍動流では恒常的に翼の負圧面で前縁付近から大規模な流れのはく離が生じ、実質的に迎角の増大により失速状態が深くなる効果があることが予測された。この前縁付近から発達しているはく離の抑制により従来の定常流ポンプの羽根車性能の向上が期待できる。
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