研究課題
腹膜透析(CAPD)における腹膜機能の低下、すなわち腹膜中皮細胞の障害の原因の一つに、一酸化窒素(NO)の産生・代謝の異常が考えられているが、NOはラジカル分子として非常に反応性が高く、実際の計測に基づく動態評価は極めて困難であるため、NOの関与を解明・検証することは方法論的に困難であった。そこで本研究では、安定したNO計測を可能とするセンサーシステムを用いて、透析液中のNO濃度のモニタリング方法を開発し、CAPDにおけるNOの動態を明らかにして、腹膜機能の低下におけるNOの関与を解明し、機能維持あるいは改善を図ることを目的として、本年度は以下の計測方法の確立など基礎的な検討を行った。1. 計測方法の基礎的検討:CAPD外来患者を対象としてCAPD透析液バッグ交換終了直後に排液を採 取し、サンプル中のNO濃度の速やかな計測を可能とするシステムを考案した。2. CAPD透析液排液中のNOの直接計測:CAPD患者の透析液排液中NO濃度については、従来より、計測の報告がなくデータベースも存在しないため、複数のCAPD患者の排液中NO濃度を計測した。3. NO酸化物濃度の計測:NOの濃度変化とNO酸化物濃度の変化とを比較し、動態の対応を検討した。以上の結果から、NOセンサによるCAPD透析液のNO濃度計測が可能であり、またCAPD透析液中NO濃度は、腹腔内の滞留時間が長いほど高値を示し、腹膜組織およびその周辺組織からのNO産生が示唆された。
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信学技報IEICE Technical Report Vol.157,No.154
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