持続携帯式腹膜透析(CAPD)においては長1期間に及ぶと、腹膜機能が低下してくることが明らかになっており、腹膜機能調節に一酸化窒素(NO)が重要な役割を果たしていると考えられている。昨年度までの研究では、NOセンサを使用してCAPD透析液中NOの直接計測を行い、計測方法の確立など基礎的な検討を行った。また、計測したNO量の変動にNO合成酵素の補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(BH_4)が関与していることを明らかにした。本年度の研究では昨年度までの知見を踏まえて、引き続き、NOセンサを使用してCAPD透析液中NOの直接計測を行い、まず、長1期にわたりCAPD透析液中のNO量を計測した。今回、計測を行った期間内では、計測開始当初においてはNO量の低下傾向が見られたが、長期間に及ぶに従って再び増加する傾向がみられた。 さらに、今年度はCAPDと血液透析(HD)との併用療法の患者を対象として、HD前後のCAPD透析液中NO濃度をNOセンサで直接計測した。その結果、使用済透析液中にNOが計測され得るレベルで存在することが明らかとなり、併用療法により、酸化ストレスの低下に伴うと考えられるNO量の増加が見られ、CAPDとHDとを併用することでNO産生に影響を与えることが示唆された。 本研究のNOセンサによるNO濃度の直接計測は、NO濃度変化とNO以外の様々な関連物質との関係の検討等により、腹膜機能の定量的評価、腹膜機能の変化へのNOの関与の解明などに対して、有効な評価手段になりうると考えられたが、CAPD患者におけるNOの産生・代謝などの詳しいメカニズムについてはさらに詳細な検討が必要である。
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