気道末梢部位を末梢細気管支系と肺胞系の2つの部位に分けて、体内の複雑な分岐形状を再現した末梢気道部位の気流シミュレーションを行った。それぞれのモデルの特長は、末梢細気管支系は空気の流出入口が複数存在するモデル、肺胞系は流出入口が1つしか存在しないモデルである。モデル形状は、SPring-8でマウス胸部画像から構築した。得られた画像から末梢細気管支系および肺胞系の実形状モデルを構築し、気管支壁が一様に膨張・収縮する際の気流シミュレーションを行った。末梢細気管支系では気管支壁が動くことによってモデル内のガス拡散が増強することが判明し、また肺胞系では、従来気流速度はほとんどゼロであるため物質輸送は分子拡散が支配的と知られていたが、肺胞壁が動くことによって気流が発生し、それによる拡散が重要であることが明らかになった。一方、実際の呼吸に伴う動きを再現したモデルを構築するために、SPring-8放射光を利用した4D-CTを新たに開発し、末梢細気管支の動態解析を行った。このシステムでは、呼吸&心拍のモーションアーチファクトを軽減するために、露光タイミングを気道圧とECGと同期を取りながら撮影を行うことによって、鮮明な画像を取得することが可能となった。その解析結果より、実際の肺の動きは一様でなく、場所によって不均一さらに非線形であることが明らかになった。このような変形を定式化するのは困難であるため、計算格子を作らない画像から直接数値計算が可能であるボクセル法が有効である。そのため、動態観察で得られたデータの特徴量を追跡する画像処理やそれらの形状データを元にした移動境界問題に対応したボクセル法を開発を行い、呼吸に伴う実際の気道末梢部位の変形を考慮した気流シミュレーションを行っている。
|