犯罪現場には犯人の指紋が残されていることが多く、捜査においては重要な手がかりとなっており、指紋を検出するために、薬品やレーザを使った検出法が開発されている。しかし印象されたばかりの指紋は鮮明に検出できるが、経時変化した指紋は太陽光や温度・湿度等のため検出が困難になるという問題がある。そこで本研究では経時変化した指紋の可視化を目的として研究を行った。 まず経時変化した指紋を可視化するために、様々な条件下での指紋の経時変化を調べた。無蛍光ガラス及び白紙上に印象した指紋を、太陽光、蛍光灯、箱の中、湿度等の条件を変えて保管し、可視化が可能かについて調べた。箱の中のものは、太陽光及び蛍光灯よりも劣化が少なく、また低湿度に保ったものも比較的劣化が少ない結果となった。 以前の研究で、レーザ光を照射し続けると、発光波長340nmを中心としたピーク以外に、発光波長440nmを中心としたピークが現れ、次第に大きくなっていくことを示した。これまでは時間分解法と340nmバンドパス光学フィルタを組み合わせることにより行ってきたが、時間が経った指紋は可視化できなかった。そこで時間と共に大きくなる440nmのピークを利用して指紋の可視化を試みた。その結果、はじめは観測されなかった指紋が、時間が経過すると観測できるようになった。この結果は、指紋がつけられてから、どの程度時間が経過したかをわかるための目安一つとなる可能性がある。 今回の実験は限られた期間の測定しかできなかったが、さらに時間が経った指紋がどのような変化を示すかを調べるため、今後も引き続き指紋を保管し経年劣化の実験を続けていきたい。
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