研究概要 |
脳梗塞や心筋梗塞の原因となる血管内病態の一つである不安定プラークの画像診断能向上を目的した研究を行った。PET(Positron Emission Tomography)画像とMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像の重ね合わせ手法の開発を行った。PET画像からは不安定プラークと相関性の高い炎症部位に18F-FDGトレーサーが集積する特徴を利用して,不安定プラークの生理学的情報を得られる。MRI画像からは不安定プラークとその周囲の血管の解剖学的情報を得られる。従って生理学的情報(PET)と解剖学的情報(MRI)の融合により診断能の向上が期待できる。実験動物の頸部を対象とした不安定プラークモデル作成法の検証と,重ね合わせ手法の開発と精度検証を行った。不安定プラークモデル作成では,傷害反応仮説に基づき,家畜ブタの右総頸動脈に対して擦過による内膜剥離処置を行った。重ね合わせは,撮像部位の体表面に固定した赤外線反射マーカーを三次元位置測定装置によって測定し,PETまたはMRI撮像時の撮像部位の位置を得て,その測定値からPETとMRI画像を重ね合わせた。不安定プラークモデルの作成後,1日,1,2,4,8週間と6ケ月に,エコー,PETとMRI撮像を同日に行った。エコー検査では健常側(左総頸動脈)と比較して,モデル作成側(右総頸動脈)の狭窄を確認した。PET画像では,健常側と比較して,モデル作成側に18F-FDGの強い集積が認められ,炎症反応の発生を確認した。MRI画像では,エコー検査と同様に,モデル作成側の狭窄が認められた。外科的処置による不安定プラークモデル作成の可能性が確認できた。重ね合わせに関しては,約15mmの誤差が存在した。来年度は,不安定プラークモデルのより詳細な生理学的・解剖学的検討と重ね合わせ精度の向上を目的として研究を行う。
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