研究概要 |
冠動脈疾患の治療適応において,血管内病変の観察と共に,心筋生理機能の定量的評価の重要性が認識されつつある。生理機能の指標としては,SPECTにより測定可能な局所心筋血流予備能がある。一体型SPECT/CTの普及に伴い,CT画像が減弱補正に用いられるようになったが,心臓検査では呼吸を原因とする,SPECT画像とCT画像の空間的ミスマッチが正確な局所心筋血流予備能測定を阻む要因の一つであった。本研究では,SPECT画像とCT画像の重ね合わせに適したCT撮像時の呼吸時相決定のために,呼吸時相を定量的かつ被検者自身が制御可能とする呼吸時相提示システムを開発した。健常ボランティア14例を対象とした201T1心筋SPECT/CT検査において,最大吸期,最大呼期,中期を本システムの基で被検者が実現可能かを検証した。被検者ごとに,CT撮像前に最大吸期および最大呼期での腹部に固定された赤外線反射ターゲットの位置を3次元光学式位置測定装置により測定し,その中間位置に相当する時相を中期と定義した。技師の合図とともに被検者が本システムによりリアルタイム提示された腹部の動きを参照し,所定の呼吸時相を保ちつつCT撮像を開始する手順を最大吸期,最大呼期,中期について繰り返した。各時相のCT画像において横隔膜凸部の座標値を計測し,時相間の側,腹背および頭尾方向に関してStudentのt検定により比較した。側方向における中間期・最大吸期の対を除いた,各方向の時相間で有意な差が認められた(p<0.05)。側方向の中期と最大吸期間では有意な差が認められなかった。これは,呼吸による体幹部および横隔膜の変位は,腹背および頭尾方向に関して大きく,側方向には小さいためであり、妥当であると考えられる。以上から、本システムが提示する情報を基にして,被検者が3種類の異なる呼吸時相を実現可能であることが示唆された。
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