研究概要 |
本研究では, 生体内のストレス環境を模倣した培養システム(メカニカルスティミュレータ)の開発と規則的構造体を有する3次元エラストマー成担体の開発を通して, 力学刺激量とそれに対する細胞の増殖・分化誘導条件の最適化を目指している. 本年度は, 3次元PDMS担体に播種した未分化骨芽細胞MC3T3-E1のメカニカルストレス培養を行い, ストレス値と細胞応答を検討した. 一定期間の培養後, 全RNAを抽出してRT-PCRによりRNAの発現量を調べた結果, コントロール群と比較して圧縮ひずみ6.5%にてタイプ1コラーゲン・ALPの発現が低下し, 分化抑制の傾向があった. 一方, 引張ひずみ6.5%における分化抑制効果は得られなかった. これまでに我々は, 未分化軟骨細胞が圧縮ひずみで分化促進・引張ひずみで分化抑制を示すことを示しており, 細胞種により異なるストレス応答を示すことがわかった. これはメカニカルストレスにおける分化誘導の可能性を示唆する. また, インテグリンの関連分子でもあるCD47の遺伝子発現がストレス負荷群のいずれにおいても上昇していることが明らかになった. CD47は膜たんぱく質SHPS-1と結合し, 細胞間シグナル伝達を作成することが報告されていることから, CD47-SHPS-1のシグナル伝達経路がメカニカルストレス感知の1つである可能性を示唆する.
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