研究概要 |
ポリ乳酸(PLA)の優れた生体内分解吸収ならびに力学特性を維持したまま、ポリ乳酸表面を化学修飾し、種々の生理活性物質とのコンジュゲート化を実現すれば、PLAの医用材料としての有用性は飛躍的に拡大すると考えられる。本研究では、(1)PLA表面を特異的に認識できるペプチドを、ファージディスプレイ法を用いて探索し、(2)認識ペプチドを介し機能性分子を複合化した新規PLA系バイブリッド材料を創製し、(3)その機能を評価することを目的とする。 本年度は、ファージディスプレイ法を用いてポリ乳酸表面に特異的に結合するペプチド配列を、ランダムペプチドライブラリーからスクリーニングした。ランダムペプチドライブラリーは、大腸菌を宿主とするバクテリオファージ(M13繊維状ファージ)のコートタンパク質(pIII)上に提示する形で作製し、ペプチド構造としては、直鎖(7-15残基)、またはシステイン残基のジスルフィド結合を利用した環状ペプチドとした。標的として、スピンコート法により調製したポリ-L-乳酸(poly(L-lactide),PLLA)の結晶化超薄膜フィルムを用い、アフィニティ選択によりPLLAに特異的に結合するファージを濃縮した。選択圧(標的とのアフィニティ、洗浄、溶出、の各段階におけるpH、塩濃度、反応時間、溶出溶媒の極性)を検討しながらファージの濃縮操作(バイオパニング)を行い、4ラウンドの濃縮操作の後、クローニング、遺伝子配列決定を行い、PLLA結合性ペプチドのアミノ酸配列として9種類の配列を同定した。表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いた分子間相互作用解析の結果、PLLAのα-form特異的に結合し、ポリ乳酸結晶多形を識別可能なペプチドを見出した。
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