ポリ乳酸(PLA)の優れた生体内分解吸収性ならびに力学特性を維持したままポリ乳酸フィルム表面を化学修飾し、種々の生理活性物質とのコンジュゲート化を実現すれば、PLAの医用材料としての有用性は飛躍的に拡大すると考えられる。本研究では、PLA表面を特異的に認識し結合するペプチドを、ファージディスプレイ法を用いたライブラリースクリーニングにより探索し、認識ペプチドを介し機能性分子を複合化した新規PLA系バイブリッド材料を創製することを目的とした。平成20年度は、前年度までにポリ-L-乳酸(PLLA)のα-form結晶に対するスクリーニングにより同定した2種類のペプチドに関し、表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いた詳細な分子間相互作用解析を行った。その結果、直鎖7残基の短鎖ペプチド(配列 : QLMHDYR)が、PLLAのα-formに対し最大で6.1x10^4M^<-1>の結合定数を示すのに対し、PLLAのβ-form結晶あるいはアモルファス膜に対する結合定数はそれぞれ1/4、1/9に低下することが分かった。すなわち当該ペプチドはPLLAの結晶多形を識別し特異的に結合できることを明らかとした。また変異体解析より、4残基目のヒスチジンおよび7残基目のアルギニンが認識に重要であることも明らかにした。一方、交互積層法を用いて調製した最外層がPLLAのβ-form結晶膜に対しファージディスプレイ法を適用し、4ラウンドのファージプールの濃縮操作の後、3種類のPLLAβ-form結合性ペプチド配列を同定した。Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)の結果、見かけの結合定数が10^<10>M^<-1>オーダーに達する極めて強い結合を示すペプチドを見出すことに成功した。
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