本申請課題では、細胞培養において非侵襲であり、かつ実現性の高い方法として、細胞培養過程での詳細な経時的観察および解析による評価方法を提案する。細胞培養環境下において顕微画像を取得し、細胞の形態や移動度、遊走性、分裂頻度などを総合的に解析することにより、細胞の状態、増殖能、細胞分化・変性、さらには細胞機能発現、細胞周期、意図した細胞組織構築までにかかる時間予測など、将来的には様々なデータを得ると同時に、シミュレーションを可能とすることを目的としている。 平成19年度は、顕微画像に対する画像解析ソアトウェアのプロトタイプを作成した。これまで行ってきた細胞の自動認識とその細胞挙動解析に関する基礎的アルゴリズムを検討することにより、非侵襲的にかつ、詳細な細胞状態を確認することを可能とした。このソフトウェアを用い、繊維性Scaffold上にて細胞培養を行った際のタイムラプス画像を解析した結果、繊維径と細胞挙動の間に関連性があることを定量的に示すことが可能となった(査読付論文として発表)。この検討手法は、細胞の足場を最適化する際に有用であると考えられた。 平成20年度では、画像処理および解析ソフトウェアの改良と、一般的な評価方法と本手法により得たデータの相関性や信頼性の評価および検証を行い、評価精度を高めることに重点を置き、さらなる検討を行う。また、画像解析により得られたデータを解析ソフトウェアに組込み、細胞培養状態の予測シミュレータとしての機能を実装する予定である。
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