研究概要 |
当該研究は,対象臓器を肝臓とし,術前に作成した患者の肝臓モデルと,術中に得られる内視鏡画像列を用いて,精緻な術中肝臓モデルを実時間で推定する手法の構築,およびその処理を組み込んだ次世代内視鏡手術支援システムの開発を目的とする. 平成19年度では,力学的・幾何学的境界条件を入力信号とし,基本変形モードの組み合わせによって,患者の肝臓モデルの任意の変形を推定するシステムの構築を目的として,以下の研究項目に沿って研究を実施した.ここで,この肝臓モデルは,MRIやCTで撮像した医用画像から予め作成する. まず,外力パラメータを,力の作用点の位置,大きさ,向きベクトルの3つの要素で構成し,並列計算機を使って,与えられた外力に対する肝臓モデルの変形を非線形FEMでシミュレートするシステムを構築した.次に,モデルの表面上の点を作用点として用い,外力パラメータの値を変えながら,その外力に応じて変形した肝臓モデル(以後,変形モードと呼ぶ)を多数生成し,外力とそれにより得られた変形モードの組をトレーニングデータとした.そして,多数のトレーニングデータを用いて,外力を入力して与えると,それにより得られる変形モードを出力するシステムを,ニューラルネットワークを用いて作成した.得られたニューラルネットワークを,neuroFEMと呼ぶ. 任意の外力を入力として,neuroFEMで出力したモデルと,その外力を使って非線形FEMで推定したモデルの形状を比較した.その結果,モデル間の誤差は,肝臓の大きさに対して0.09であり,良好な結果が得られた.来年度では,この精度を更に高めると共に,画像列を用いたシステムへ拡張することを研究課題として,研究を行う。
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