安全で有効ながん遺伝子治療を確立していくためには、低侵襲的かつがん組織特異的な遺伝子導入方法の確立が必須である。これまでに申請者は、リポソームに超音波造影用ガスを封入した新たなタイプのリポソーム(バブルリポソーム)を開発し、バブルリポソームと超音波の併用によりin vitro培養細胞に細胞傷害性を伴うことなくプラスミドDNAを導入可能であることを報告してきた。この遺伝子導入法は、超音波照射時のみに遺伝子を細胞に導入可能であるため、がん遺伝子治療への応用を考慮した場合、がん組織に超音波照射することで、がん組織特異的に遺伝子を導入可能になると考えられる。また、超音波は体外からがん組織に照射可能であるため、低侵襲的遺伝子導入法としても期待される。そこで本研究では、バブルリポソームと超音波の併用によるがん組織への遺伝子導入について検討した。フットパッドにがん細胞を移植した担がんモデルマウスを作製し、腫瘍支配動脈にあたる下肢大腿動脈からバブルリポソームとルシフェラーゼ発現プラスミドDNAを投与し、それと同時にがん組織に体外から超音波照射を行った。その後、ルシフェラーゼ発現部位をルシフェラーゼin vivoイメージングシステムを用いて観察した。その結果、がん組織のみにルシフェラーゼ発現が確認された。このことから、本方法ががん組織特異的かつ低侵襲的な遺伝子導入方法の確立に有望であることが示唆された。したがって、バブルリポソームと超音波照射の併用が、がん遺伝子治療に向けた新規遺伝子導入ツールになるものと期待される。
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