研究概要 |
(1)構築の乱れの検出性能の向上 構築の乱れは,乳房X線写真における読影において,最も見落としが多いといわれている病変である.従来開発している構築の乱れの検出アルゴリズムにおいて,特に,真陽性と偽陽性の識別性能の向上を目指すため,用いる特徴量と識別器との組み合わせの効果を検討した.具体的には,特徴量が正規分布に従うと仮定し,平均が異なり共分散行列が等しい分布,平均が等しく共分散行列が異なる分布,平均と共分散行列が異なる分布,の3つのシミュレーションデータを作成し,線形判別,2次判別,ANN,SVM,AdaBoostの5つの識別器での識別性能を比較した.その結果,2次判別は,用いることができるデータ数に依存せずに,比較的安定した識別性能が得られることが明らかとなった.また,トレーニングデータの数と性能から,期待できるテストデータの性能を予測する可能性が示された. (2)良悪性鑑別に関する特徴量の自動判別とその提示方法の検討 医師は,乳房X線写真の読影レポートをACRが示したBI-RADSに準じた記載方法で作成する.具体的には,腫瘤陰影は濃度と形状,微小石灰化クラスタは分布と形状で良悪性が鑑別されるため,これらに基づく自動判別システムを開発した.このシステムでは,病変部ありの症例のカテゴリーを,カテゴリー3,カテゴリー4,カテゴリー5の3段階で判別する.画像のみ,画像とシステムのカテゴリー,画像とシステムのカテゴリーとシステムの判断基準を提示,の3種類の読影実験を,経験の浅い放射線技師を対象として行った.その結果,システムのカテゴリーのみを提示するよりも,同時にシステムの判断基準を示す方が,一致率の向上に有効である可能性が示された.
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