研究課題
本研究はPET装置におけるノイズ成分である偶発・散乱同時計数を低減する手法を開発することを目的とする。PET用のブロック検出器においてもコンプトンカメラと同様に検出器内で複数回の相互作用した事象(結晶内多重散乱)に対して消滅放射線の入射方向を大まかに特定することで偶発同時計数の低減を目指す。本年度は主にブロック検出器における結晶ブロック内での多重散乱の識別方法を検討した。256チャンネルの位置弁別方光電子増倍管の出力を独立して読み出せる検出器系を想定して、出力データに統計的クラスタリングの手法を多重散乱識別に用いた。モンテカルロによるシミュレーションの結果では約8割の多重散乱の識別能を達成した。また、192チャンネルの独立読み出しシステムを構築し、実測データに本手法を適用した結果、実測データに対しても多重散乱成分を識別できることを確認した。また、汎用のPET装置シミュレータと検出器シミュレータを組み合わせることによって消滅放射線の発生から検出器内での光の振る舞いまでをシミュレーションできる環境を構築した。本シミュレータを用いて小動物PET装置を模擬した系で結晶内多重散乱が空間分解能に与える影響を検討した。結晶内多重散乱は視野中心においては半値幅にはほとんど影響を及ぼさないが、視野中心を離れるほど空間分解能を劣化させる傾向が見られた。1/10幅においては線源位置に関係なく2割程度空間分解能が劣化した。結晶内多重散乱を取り除けば空間分解能が少し改善するが感度が大幅に低減されるためPET装置の高感度計測を生かすためには多重散乱成分も利用することが望ましいと考えられる。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A 571
ページ: 243-246
Japanese Journal of Medical Physics 26
ページ: 131-140