胃および食道用コイルは、SNR向上のためにコイル巻き数を8として銅配線幅を0.2mmとし、胃用コイルは40×40mmのサーフェス型、食道用コイルは長さ約30mm×径約14mmの鞍型とした。ポリイミド基板の使用でコイル全体の柔軟性は保持でき経口的に食道・胃へ挿入可能であった。コイル特性に関しては、体外空気中で調整された特性が胃および食道内で大きく変化し、特にコイル面が粘膜表面と接する場合や液体に浸る場合は変化が大きくなり、MR像のSNRが顕著に低下した。そのため、胃用コイルはバルーンで包んで胃粘膜表面との絶縁を図り、更にバルーンを空気で膨張させてコイルと胃粘膜表面との間にスペースを確保した。食道用コイルでは、内径14mm、外径17mmのビニールチューブの内腔にコイルを組み込み、コイル面と食道粘膜表面との間に約1.5mmの絶縁層を設けた。これにより、コイルエレメント近傍の組織に及ぶアーチファクトが軽減され、更にコイル特性の変化も軽減され、体外空気中の特性からの変化は胃および食道で、それぞれ共振周波数が約0.5〜1MHzと約1.5〜2.5MHz、インピーダンスが約20〜25Ωおよび約30〜80Ωであった。この変化量は体内への挿入長、体内でのコイル形状、配置に関係すると推測され、その関係を調べるin vivo実験がさらに必要である。また、コイルを体内挿入後にコイル特性を調整するために、コイルループ近傍の同調・整合回路からλ/2(約1.5m)離れた位置にリモート調整回路を作成し、コイル特性の微調整を可能とした。この回路による調整幅は狭いが、コイルループ近傍の同調・整合回路で極力目的の特性に調整できていれば、体内挿入後に最適な特性にリモート調整可能であり、良好なMR画像が得られる。一方、体外からの胃用コイルの操作性は、コイルの同軸ケーブルに1.5〜3mm径のアクリル棒を固定し、内視鏡との併用でコイル配置操作を容易にした。更なる操作性向上には、コイル近傍に関節を有することが必要と考え今後検討する。
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