消化管内へ挿入するRFコイルの電気特性リモート調整回路については、可変コンデンサのみでの調整では容量性成分が大きく残存する場合があり、完全な調整には可変インダクタを併用して複素成分をゼロにする必要がある。しかし非磁性体可変インダクタの入手が困難のためリモート調整回路の製作は今後の課題とし、RFコイルを体内挿入後に最適な電気特性になるように予め電気特性をずらして調整する手法で研究を進めた。そのため体内挿入前後でのRFコイル電気特性変化がコイル構造にも依存するかを調べた。同時にコイル巻き数を少なくしてデカップリング改善が図れるかを検討した。食道用RFコイルを3巻きおよび4巻きの鞍型形状で構成し、厚み1.5mm(外径17mm、内径14mm)のビニールチューブ内に固定した。無負荷時から食道内挿入時のRFコイルの共振周波数とインピーダンスは、摘出ブタ食道と生体ブタでそれぞれ約0.2MHzと約0.5MHz、および約10Oと約30Oの低下を示した。8巻きコイルと比べると変化量が少なく、コイル巻き数が生体内挿入後の電気特性変化に影響すると推測した。またデカップリング不良によるアーチファクトは摘出ブタ食道では軽減され、食道壁層構造を識別し得る画像が得られた。しかし生体ブタではアーチファクト発生が確認された。生体では負荷環境変化が大きいためにデカップリング回路の共振周波数も大きく変化すると推測され、デカップリング回路構造の変更が必要と考える。この点も今後の課題とする。 なお胃用RFコイルは、バルーン内設置により電気絶縁の向上と電気特性変化の軽減が図れたが、同調・整合回路基板のサイズと強度、およびコイルに添わせたアクリル棒によるコイル操作性の低さから、胃腔内でのコイル誘導箇所に制限が生じ、目的の部位に安全に誘導し最適な姿勢で保持することが困難であった。解決策としてコイル電気特性を安定にしつつ回路基板を多関節構造にするが必要と考え今後検討とする。
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