平成20年度は、平成19年度で検討した失語症検査、経頭蓋磁気刺激(以下TMS)の刺激方法、被験者のエントリー基準に基づいてTMSを行った。 Broca失語患者4名がエントリーした。TMSについて十分な説明を行い、東北大学倫理委員会に基づいたインフォームドコンセントが得られ、頭部MRIを撮影し失語症の原因となる病変以外に異常所見がないことを確認した。撮影した頭部MRI画像を用いて3次元イメージビューを作製し、刺激部位を正確に同定しTMSを行った。刺激部位は補足運動野と右Broca相同領域に分け、TMSとsham刺激をそれぞれに行った。補足運動野には40%、5Hz、200発の興奮性磁気刺激を、右Broca相同領域には40%、1Hz、200発の抑制性磁気刺激を行った。刺激の前後に呼称課題を行い、呼称課題の写真を提示してから発声開始までの反応時間を測定し、同一被験者内でTMS刺激前後での呼称課題反応時間差とsham刺激前後での呼称課題反応時間差の比較を行った。また、被験者の主観的得点として反応時間の改善をVASを用いて測定した。 結果としては、Broca失語患者への抑制性磁気刺激は、呼称速度を有意に早め、Broca失語患者の補足運動野への興奮性磁気刺激は、発語反応時間を有意に遅らせた。右Broca相同領域へのTMSによる改善は、被験者の主観的得点にも反映されていた。右Broca相同領域への抑制性磁気刺激は、呼称速度(言語機能)に有意な改善を生じさせたが、補足運動野への刺激は変化が見られなかったという結論に至った。 本研究の内容を、2009年6月に第46回日本リハビリテーション医学会にて学会発表する予定である。
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