研究概要 |
本研究の目的は, 前頭連合野の主要な機能であるワーキングメモリや目的に向けた計画という要素を含み, 個人の能力や興味に合わせて自由に作成可能なリハビリテーション(以下, 目的志向的遅延反応訓練)を開発することである. 本年度の研究において, 目的志向的遅延反応訓練を行うことでの効果を, 認知, 心理, 日常生活行動などを多面的から検討した. 認知機能低下を呈する患者39名を無作為に介入群(21名)と非介入群(18名)に分け, 介入群には, 本訓練を週2回, 3ヶ月間実施した. 認知・記憶評価としてMini-mental states examination(以下, MMSE), 語の流暢性テスト, 前頭葉機能検査(以下, FAB), 三宅式記銘力検査, 日常生活評価としてNMスケール, 心理面の評価として高齢者うつ尺度(以下, GDS)を行った. 一方, 非介入群には, 特別な介入を行わなかった. その結果介入群では, MMSE, 語の流暢性, FABなど多くの点に向上が見られた(Takeda et al. in preparation). また, NMスケールや介護者の情報から, 日常生活における記憶や見当識にも改善を示し, 生活機能への般化が示唆された. GDSからは心理面の改善も示唆された. これらのことから本訓練の導入によって, 認知, 記憶, 情動といった前頭連合野の機能の改善が強く示唆された. しかし, 今後, 前頭連合野のリハビリテーションとして確立していくためには, 課題実行中や課題の進行に伴った脳活動を測定し, 機能改善の背景となった神経基盤を検討していく必要があると考えている.
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