研究概要 |
本研究では、高齢者の補聴器装用と言語聴覚機能及び認知機能の関係について検討することを目的としている。自立生活を営む高齢者と補聴器を装用する高齢者の2群に対し、聴覚・言語・認知機能を実施し、3〜4年間の推移について検討している。今年度は研究2年目であり、昨年度の調査対象高齢者23名のうち追跡可能であった17名及び新たに調査に参加した高齢者13名の計30名についての検査を行った。被験者のうち、補聴器の装用が必要であり、かつ本人の了解が得られた高齢者に対しては、補聴器の試聴、貸し出しを行い、定期的な聴覚フォローアップを行った。全被験者に行う評価は同時期に年1回であり、聴覚機能については、標準純音聴力検査による聴力測定、ことばの聴取能力に関する検査(57S語表)、中枢聴覚機能検査(小渕, 2003に作成)、言語・認知機能については、知能検査短縮版(WAIS-Rのうち、言語性検査2項目、動作性検査2項目)を行い、補聴器を装用しない高齢者と装用している高齢者についての結果を比較検討した。1年目の測定結果と2年目の結果を比較すると、両群共に、老人性難聴により1年の間に聴力、語音明瞭度、中枢聴覚機能検査の3点で低下がみられた。一方、WAIS-Rのような認知課題では、現段階では両群の差は認められず、聴覚機能と認知機能の間には顕著な関係性はみられなかった。しかし、両群の差が1年の間に現れるわけではなく、経年的変化の中で検討する必要があり、次年度以降も両者の関係やきこえの主観的評価などを含めて検討していくことが必要と考えられた。
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