対象は、NPO法人日本脳外傷後遺症の通所プログラム「ボランティア支援グループ オレンジクラブ」に所属する健常人及び脳損傷者。対象者に島津マルチチャンネル酸素モニタOMM-2001のファイバーを、送光部と受光部をそれぞれ2本ずつ組み合わせて、両側2ヶ所取り付け、計2チャンネルの測定を行った。確実に大脳前部領域の機能を検出する目的で(チャンネルの直下に大脳が当たるように)、全ての症例においてファイバーのホルダの下縁を眼窩上縁に合わせて装着した。 対象者について、Wisconsin Card Sorting Test(Keio Version)(以下 KWCST)、語列挙課題を脳賦活課題として、閉眼20秒、開眼20秒、KWCST施行60秒を6回繰り返すプロックデザインで行った。KWCSTはコンピュータディスプレイ上で慶應F-S Versionを用いた。閉眼はタスク施行で賦活化する脳活動を可能な限り元のべースラインに戻す目的で行った。NIRSの測定パラメータは酸素化Hbと還元Hb及び両者の和である総Hb量の変化である。今回の研究の結果、脳外傷による高次脳機能障害者の場合、健常人に比較して、KWCST施行中の前頭葉の酸素化Hbと総Hbの値が優位に低い結果となった。一方で、(1)課題施行前のベースラインを症例ごとに一致させることが困難なこと、(2)前頭部に取り付けたファイバーが、前頭葉のどの部分に当たっているかが厳密には判断が困難なこと、などの課題があり、今後、症例を増やし、更なる検討が望まれる。
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