研究概要 |
本年の研究の目的は, 外傷性脳損傷による後遺症を, 先進的画像診断システムによって検出し, 昨年報告した近赤外線分光法(NIRS)による前頭葉機能評価との整合性を確認することである. 拡散強調画像は, 生体情報を非侵襲的に画像化する方法として臨床医療に浸透してきた. これまでに, SPMを用い健常例と疾患例とのFA-mapを比較し, 異常部位を検出する診断支援システムは度々報告されている. び慢性軸索損傷(DAI)と軽症頭部外傷(MTBI)は, 類似した後遺障害を残すにも関わらず, MTBIは急性期の明らかな意識障害が確認されないために, 自賠責保険後遺症診断などにおいて低い等級として認定される傾向がある. MTBIにおいても, 明らかな脳器質病変の検出が可能になれば, 後遺症の客観的根拠となり得る. そこで今回我々は, DA工とMTBI患者両群のDiffusion Tensor Imaging(DTI)パラメーターについて比較・検討したので報告する. 撮像した健常被験者に対し, FA-map, ADC-map, λ1-map, λ2-map, λ3-mapを作成, データベースとし, 疾患例と比較して有意に差がある部位を特定した. 健常被験者13名, DAI患者6名, MTBI患者12名を対象として, 拡散強調画像を撮像し拡散テンソル画像としてmapに展開した. 結果, DAI群では, DAIの病理学的定義通り, 脳梁, 脳幹, 大脳半球深部白質などに広範にびまん性のFA値低下を認めた. 一方, MTBI群では, びまん性ではなく, 局所的にFA値の低下を認めるのみであったが, 局所的とはいえ, 明らかな軸索線維の損傷を検出できた. 以上より, 拡散テンソル画像は, 脳外傷後遺症の検出に有用であり, NIRSによる前頭葉機能評価の有用性と一致した結果となった。また昨年度のNIRSの研究成果については、書籍に紹介も行った。
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