日常、私たちが生活する中で、横揺れや振動に対して身体は無意識もしくは意識的に転倒しないように姿勢を保持している。地震体験をするような装置の小型版である振盪台の上で、転倒しないように両足をしっかり踏ん張ることが、大腿骨をはじめとした下肢骨の骨密度を上昇させると考えられる。振動刺激のような原理を用いた物理療法は、その条件設定により従来の運動療法より、十分な骨密度上昇の効果が期待できる。これは骨折予防といった予防医学と位置づけ、その効果について研究を行った。本年度(〜平成20年3月31日)の研究実施計画により、骨密度低下モデルマウスを用いて以下の動物実験を行った。振盪刺激群には1日1回、30分間、自作の振盪装置(TAITEK NR3)によって150min-1の強度で刺激を与え、それを10週令から17週令までの8週間継続し行った。解析方法は1.X線撮影、2.組織解析、3.骨密度測定、4.骨強度試験、5.3点曲げ試験を行った。結果、X線画像解析では、+群(振盪刺激群)において骨端に近い骨幹部において緻密骨の増強傾向が得られた。骨密度解析の結果は骨端部において、海綿骨と皮質骨ともに+群において-群(非振盪刺激群)、及びCont.群(野生型群)よりも低下傾向を示した。骨幹部では骨端部とは逆に+群が-群及びCont.群と比較して骨密度が増加傾向にあった。組織解析から骨幹部の皮質骨の厚さと骨端部の骨梁の幅を計測した。骨端部の骨梁の幅は、+群が-群及びCont.群と比較して薄い傾向を示した。骨幹部の皮質骨の厚さでは+群が最も厚く、次いでCont.群が厚く、一群が最も薄い結果となった。3点曲げ試験では破断エネルギーは、+群が最も大きく、次いで一群が大きく、Cont.群が最も小さかった。破断偏位も同様な結果だった。最大荷重は、一群が最も大きく次いでCont.群が大きくなり、+群が最も小さかった。骨増強の部位差や骨格筋量の増大を考慮し、来年度以降に研究を継続していきたいと考えている。
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