カルセイン投与により骨の組織標本を作製し、組織解析、骨中無機質成分(Ca、P含量)の測定、および骨形態計測を行い比較検討した。骨組織の標本を作製し骨芽細胞特異的染色であるALP酵素染色において骨端線付近に染色線が観察されたが、3群間で明瞭な相違は得られなかった。また、骨幹部においては染色性が見られなかった。骨中無機質成分(Ca、P含量)の測定の結果は、3群間でCa、Pともに有意な差は得られなかったが、刺激を行なった群に増加傾向があった。骨形態計測では、骨構造解析において、+/+群では単位骨量、骨梁幅、骨梁数が増加傾向を示した。 また、骨梁間隙は減少傾向を示した。反対に-/+群では単位骨量、骨梁幅、骨梁数は減少傾向を示し、骨梁間隙は増加傾向を示した。骨吸収においては、+/+群の吸収面、破骨細胞数は3群のうち最小値を示し、-/+群は最大値を示した。骨形成において、類骨面と類骨量で+/+群は、-/+群と比べほぼ同値を示し、Cont. 群に比べ増加傾向を示した。骨は生体において常にリモデリングが行われている。骨の形成と吸収のバランスが骨吸収側に傾いた状態が長期にわたる事で骨量が減少し、骨粗鬆症に至る。今回の実験の結果、振盪刺激により+/+群は、-/+群に比べ骨単位量、骨梁幅、骨梁数は高値であり、骨梁の増加が確認された。ALP酵素染色や骨形成を表す類骨面・類骨量の結果では3群に差異はなかった。これらより+/+群は振盪刺激によって、骨形成が促進したというよりも、骨吸収が減少したと考えられる。よって振盪刺激は、骨密度低下の抑制が可能になるのではないかと考えられる。 本年度は骨密度という点に着目して実験を行ったが、振盪刺激には、骨格筋の増強、平衡感覚の向上、運動負荷による脂肪代謝促進などの効果も期待できる。来年度はこれらの結果を踏まえ人への応用が可能かどうかも含め研究を遂行していきたいと考えている。
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