安全かつ効率的な筋力トレーニング方法として、温熱刺激を活用した温熱負荷トレーニングが提案されている。これまで、温熱刺激により筋肥大の促進、筋萎縮の軽減および萎縮からの回復促進が確認されている。したがって、温熱刺激を与えることは、高齢者の筋力低下の予防や筋力増強につながると考えられるが、温熱刺激がどのようなメカニズムで筋肥大を引き起こすか未だ明らかでない。そこで本研究では、(1)温熱刺激によるNF-κBの活性およびその活性に関与するサイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα)の発現、(2)温熱刺激による骨格筋肥大におけるサイトカインの関与を明らかにし、ヒトへの応用を目指すことを目的とする。本研究は3年計画で実施され、本年度はその1年目に当たる。本実験を実施するに当たり必要な設備・備品は現有のものを使用している。本年度の検討項目は、温熱刺激による骨格筋肥大とNF・κBおよびNF・κBに関連するサイトカインの発現とする。実験にはWistar系雄性ラット(生後7週齢)を用いて、温熱刺激により骨格筋肥大が促進するか検討し、41℃の温熱環境に60分間曝露することで筋肥大が引き起こされた。また、温熱負荷したヒラメ筋では活性化NF-κBの減少が認められた。さらに温熱負荷した筋では、筋衛星細胞の一過性の活性化が認められた。以上より、温熱負荷によって引き起こされる骨格筋肥大には、NF-κBの活性抑制と筋衛星細胞の活性化が関与している可能性が示唆された。
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