安全かつ効率的な筋力トレーニング方法として、温熱刺激を活用した温熱負荷トレーニングが提案されている。これまで、温熱刺激により筋肥大の促進、筋萎縮の軽減および萎縮からの回復促進が確認されている。したがって、温熱刺激を与えることは、高齢者の筋力低下の予防や筋力増強につながると考えられるが、温熱刺激がどのようなメカニズムで筋肥大を引き起こすか未だ明らかでない。そこで本研究では、(1)温熱刺激によるNF-κBおの活性およびその活性に関与するサイトカインの発現、(2)温熱刺激による骨格筋肥大におけるサイトカインの関与を明らかにし、ヒトへの応用を目指すことを目的とした.本研究は3年計画で実施され、本年度はその3年目の最終年度に当たる。本実験を実施するに当たり必要な設備・備品は現有のものを使用している。これまでの検討により、温熱負荷によって引き起こされる骨格筋肥大は、高齢マウスでも認められること、NF-κBの活性抑制と筋衛星細胞の活性化が関与していることが示唆されたものの、その分子機構は明らかでない.そこで本鞭は、温熱刺激による骨格筋細胞の肥大におけるNF-κBおよびNF-κBシグナルに関連する因子を明らかにし、温熱刺激による骨格筋肥大の分子機序を明らかにすることとした。実験にはマウス培養骨格筋細胞C2C12を用いた.その結果、培養骨格筋細胞に対する温熱刺激(41℃、60分間)による筋タンパク増量効果が確認された。さらに、温熱負荷した培養骨格筋細胞ではNF-κBシグナルの抑制が認められた.また、NF-κB阻害薬を用いた検討により、NF-κBシグナルの抑制による筋タンパク増量効果が確認された.以上の結果から、温熱刺激による筋タンパク量の増加には、NF-κBシグナルの抑制が寄与していることが示唆された。
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