研究概要 |
〈具体的内容〉 線維芽細胞のコラーゲン産生を刺激する物質として知られるtransforming growth factor beta(TGF-β)が脱神経筋でいつの時期から発現するかに注目した。まず、脱神経骨格筋のTGFβ遺伝子発現をリアルタイムPCRで調べるため、ラットの坐骨神経を切除した後3,7,14日のヒラメ筋を採取した(各群6匹)。筋サンプルからtotalRNAを抽出し、逆転写してcDNAを作成した。TGF-βおよび内因性コントロールに使用するβ-actinの発現量を絶対定量するため、それぞれの検量線用の標準サンプルをクローニングした。今後は抽出・調整したサンプルを用い、リアルタイムPCRで脱神経筋でのTGF-β遺伝子発現を経時的に調べる予定。線維化形成の詳細を組織学的に調べるため、ラットの坐骨神経を切除した後のヒラメ筋を採取し、凍結固定もしくはホルマリン固定の後、パラフィン包埋した。今後は、免疫組織化学的手法を用いて細胞外基質タンパクであるI型・III型コラーゲンやTGF-βタンパク発現を調べる予定。 〈意義・重要性〉 脱神経後の線維化は骨格筋の機能を不可逆的に低下させる。培養線維芽細胞や損傷筋の実験より、結合組織の増生にTGF-βが関与することが示唆されているが、脱神経後に関しては不明である。TGF-βの発現時期、さらにそれ以外に線維化への関与が示唆される成長因子(fibroblast growth factorやplatelet-derived growth factor)を調べ、さらにTGF-βの発現を抑制する介入方法(薬物、機械的刺激など)を探ることで、脱神経後の骨格筋線維化形成を遅延・抑制し得ると考えている。
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