廃用性筋萎縮のメカニズムを知り有効な治療法を確立することは、リハビリテーション医学の分野で非常に重要である。廃用性筋萎縮においてタンパク分解系の促進やタンパク合成系の抑制が起こる原因の1つとして酸化的ストレスの関与が報告されており、抗酸化物質の投与で筋萎縮が防げたとの報告もある。本研究の目的は、ラット尾部懸垂による実験的な廃用性筋萎縮モデルを用い、抗酸化作用を持つ薬物を投与することで、筋萎縮を防ぐことができるかどうかを研究することである。 12週令のウィスター系雄性ラットを使用し、尾部懸垂による廃用性筋萎縮モデルを作製した。懸垂期間は7日間とし、懸垂を行わない群と懸垂を行う群それぞれについて、薬物非投与群と薬物投与群を作製した。抗酸化作用を持つ薬物としてフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンを使用した。薬物投与群ではエダラボン10mg/kgの腹腔内投与を1日2回、懸垂期間中7日間行い、薬物非投与群ではコントロールとして同様に生理食塩水を腹腔内投与した。つまり、懸垂(-)薬物非投与群(n=5)、懸垂(-)薬物投与群(n=5)、懸垂(+)薬物非投与群(n=5)、懸垂(+)薬物投与群(n=5)を作製した。懸垂期間終了後にヒラメ筋を採取し、湿重量を測定し比較した。 懸垂を行った群では懸垂を行わなかった群と比較して有意に筋の湿重量が低下しており、懸垂によって筋萎縮が起こっていた。薬物投与群と薬物非投与群による比較では、懸垂による筋の湿重量の低下に有意差を認めず、薬物投与による筋萎縮予防効果を確認できなかった。今後は薬物投与によるより詳細な影響を調べるために、筋の湿重量よりも精密な筋萎縮の評価である筋組織の断面積や筋肉中の酸化的ストレスの程度を評価する必要がある。
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