事故等により、脳内神経ネットワークがあちこちで切れてしまった彌慢性軸策損傷に起因する高次脳機能障害を念頭に、残存する神経ネットワークのシナプス伝達効率を高める目的で、2台の経頭蓋磁気刺激を用い、空間ワーキングメモリの情報処理に関与するとされる頭頂と前頭前野背外側部を数種類の刺激間隔でペア刺激した(ペア刺激毎の間隔は20秒毎で90ペア刺激)。これにより、ヘブの法則に従ったシナプス伝達効率の変調を誘導し、空間ワーキングメモリの成績向上を図った。 本年度は、空間ワーキングメモリ課題の作成、および予備実験、本実験を行った。 本実験は、被験者は8名(男性4名、女性4名)を対象にし、ペア刺激の刺激間隔は、0、2、4、6、8、10、15、20msに加え、頭頂のみ、前頭前野背外側部のみの計10種類を約2週間空けて1種類ずつ行った。刺激強度は、右第一背側骨間筋に投射する脳部位をターゲットに人差し指の微小な動きが誘発される強度を閾値強度とし、頭頂へは、その80%強度、前頭前野背外側部へは、閾値強度で与えた。8名全員がすべての刺激間隔を終えたわけではないが、現時点ではペア刺激の前後の空間ワーキングメモリ課題の成績は、刺激間隔が6msのときにのみ、他の刺激間隔時より良い成績となる傾向が観察されている。 今後、すべての被験者においてすべての刺激間隔を終え、統計処理した上でこの6msの刺激間隔により、成績が向上することが実証されれば、その刺激間隔で刺激した前後の空間ワーキングメモリ課題遂行中の脳活動をFMRIにて検討することとする。
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