研究概要 |
研究目的 : 事故等により脳内神経ネットワークが切れることによって生じる高次脳機能障害(彌慢性軸索損傷)において、その残存する神経ネットワークのシナプス伝達効率を高めることにより、症状の軽減を図れないかという考えに基づき、認知処理機能に関連する二領野を、2台の経頭蓋磁気刺激を用いてペア刺激し、ヘブの法則に則ったシナプス伝達効率の変調を誘導することができるか否か検討することを目的とした。 研究方法 : 認知処理課題として知られる空間ワーキングメモリ課題を用いて、その脳内情報処理に関連すると言われている頭頂(Parietal)と前頭前野背外側部(DLPFC)を標的に経頭蓋磁気刺激を0, 2, 4, 6, 8, 10, 15, 20ミリ秒の内、同一日にいずれか一つの刺激間隔で、20秒置きに90回与え、その前後で空間ワーキングメモリ課題の測定を行った。各刺激間隔は約2週間の間を開けて実施された。経頭蓋磁気刺激の強度は、右第一背側骨間筋に投射する脳部位をターゲットに人差し指の微小な動きが誘発される強度を闘値強度とし、Parietalへは、その80%強度、DLPFCへは、閾値強度で与えた。 研究成果 : 15名の被験者を対象に空間ワーキングメモリ課題の成績を比較・検討した結果、6ms(108.8±13-2%pre, mean±SD)、20ms(107.4±6.7%pre)の刺激間隔とParietalのみ(106.4±9.7%pre)の刺激において、刺激後のパフォーマンスが他の刺激間隔時よりも高値を示す傾向があった。しかしながら、統計的に有意な差は見られず、今回用いた刺激パラメータ(刺激強度、刺激頻度、刺激回数等)では、シナプス伝達効率の変調を示唆する明らかなパフォーマンスの変化を誘導することはできなかった。
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