研究概要 |
本研究の目的は、日常場面で使用可能な耳掛型メトロノーム・耳掛け型DAF装置を、成人吃音者が日常的に装用した際の、装用効果とそれに関連する要因について検討を加えることである。本年度は1.被験者募集、2.基礎(べースライン)データの収集、3.日常場面での装用・発話データ収集、4.装用期間中の評価、5.装用終了後の評価(一部のみ)を行い、各症例の結果から以下のことが示された。 (1)数ケ月から1年程度の装用期間を経た後では、訓練場面・日常場面(電話場面)における吃頻度が、装用前に比べ有意に減少した。装用開始前から吃頻度が非常に低かった症例においても、その他の非流暢性(挿入)の大幅な減少が認められた。 (2)装置の効果・満足度に関する自己評価は、客観的データ(装用中の吃頻度の変化)をよく反映していたが、吃音を恥ずかしいと思うなどの吃音への否定的態度を有する症例においてはその通りではなかった。 (3)装置を毎日15分以上装用し意識的に発話することで、大幅な吃頻度の減少が認められた。1〜3回/週の頻度でかつ1日平均15分以下の場合、吃頻度の減少はわずかであった。 (4)装用終了直後において、装置効果のcarry overが、訓練場面・日常場面にて認められた。しかし、装用終了後数ケ月間の電話場面での発話を観察できた2症例については,装用前とほぼ同程度まで,あるいは装用前の3/5程度まで吃頻度の上昇が観察され,完全な長期的carry overは認められなかった.終了直後の効果を長期的に持続させるためには,何らかのフォローアップ体制が必要となる可能性が示唆された.
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