研究概要 |
本研究の目的は、日常場面で使用可能な耳掛型メトロノーム・耳掛け型DAF装置を、成人吃音者が日常的に装用した際の、装用効果とそれに関連する要因について検討を加えることである。本年度は1. 被験者募集、2. 基礎(ベースライン)データの収集、3. 使用装置の決定、4. 日常場面での装用・発話データ収集、5. 面接時のデータ収集、6. 装用期間中の評価、7. 装用終了後の評価を行い、各症例の結果から以下のことが示された。 (1)DAF装置を0msの遅延速度で、すなわち遅延なしの聴覚フィードバックで使用することを希望する症例があった。この症例は現在、継続使用中(3ヶ月)である。 (2)耳掛け型DAF(遅延時間50ms)を1年間装用した症例に対しOASES(Overall Assessment of the Speaker's Experience of stuttering)を実施したところ、4側面全て(吃音に関する全般的なとらえ方, 自身の吃音への反応, 日常のコミュニケーションにおける困難, 生活の質への影響)において吃音の問題の軽快化が認められた。耳掛け型DAFが発話症状のみならず、吃音問題全般に有効である可能性が示された。 (3)昨年度までの症例は、装用終了直後は装用効果のcarry overを示す一方、装用終了から数ケ月後には, 装用前とほぼ同程度まで,あるいは装用前の3/5程度までの吃頻度の上昇を示し, 完全な長期的carry overは認められなかった. 本年度新たに加わった軽度の一症例は、装用中に吃音以外の非流暢性が低下し、それが装用終了から半年後も継続していた。この結果から、軽度吃音者に、より装置が有効である可能性が示された。
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