前年度までの研究成果を用いて、今年度は体幹部深部筋の活動様相評価を実際に行い、その成果を検証した。 7名の被検者の大腰筋に対して、3つの運動を続けて行い、その前後でMRIを撮像した。運動方法の詳細を以下に示す。(運動1)一定のリズム下にて右下肢による股関節および膝関節90度屈曲運動を100回繰り返し行う。(運動2)右足関節部に1kgの負荷を付け、(運動1)と同様の運動を行う。(運動3)左足関節部に1kgの負荷を付け、(運動2)と同様の運動を行う。評価対象の筋として大腰筋を選択したのは、体幹部の深部に位置し、最も広い断面積を有している筋の一つであるためである。 その結果、7名の被検者全てにおいて本手法により運動に誘発された筋活動を可視化することができた。また、T2値をカラーテーブルによりスケール化し形態画像と融合し表示しているため、活動した筋の場所、程度の両方を一目で把握することも可能となった。これら結果より、(運動1)と(運動2)では右大腰筋が活動しており、また(運動2)は(運動1)よりも活動の頻度が高いことを確認できた。また、(運動3)では、それまで活動していなかった左大腰筋が活動したこと示すこともできた。 従来、ヒトの随意運動の根幹を成す体幹部に位置する筋群の評価は、四肢にも増して重要性が高いにもかかわらず、評価方法は存在しなかった。本研究では、体幹部トレーニングとみなされている運動動作が体幹部骨格筋に正しく作用するのか否かを明らかにする定性的評価方法の提案に初めて成功することができた。本手法を用いれば、運動内容と活動した筋との関連性を画像化することで定性的評価が可能となる。これにより、例えば腰痛予防に効果的な筋の特定に寄与できることや、従来の経験則による筋力トレーニングにおける運動内容と使用する筋との関係把握などが期待される。
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