研究概要 |
近年高等教育機関で学ぶ聴覚障害学生の増加にともない,学習する権利を保障するための講義における情報保障の必要性が高まっている.現在,高等教育機関で情報保障手段としておもに採用されているのはノートテイク,パソコン通訳,手話通訳などであり,最近では音声認識技術を用いた字幕や遠隔リアルタイム字幕・遠隔手話通訳などの新しい支援技術も導入が始まっている.これらの情報保障には,情報保障者の人材不足や専門性の高い講義への対応が可能な情報保障担当者の育成方法など,解決しなければならない課題が山積している. 本研究では,現在聴覚障害学生を受け入れている高等教育機関でおもに採用されている情報保障手段や新たに技術的な開発が進められている情報保障手段に着目し,(1)情報保障手段の定量的・定性的評価(2)情報保障者への技術的支援手法の検討と評価を通して,講義における情報保障の量と質を高めるために必要な条件を明らかにすることを研究の目的とする. 平成19年度は,情報保障手段の定量的・定性的評価に関する検討を行い,講義の講師が話している内容や板書の内容等を何らかの方法で聴覚障害学生に提示するものへ変換するときに,それらがもともと発せられている量に比べて情報量がどれだけ保たれているのか,またもとの情報が発せられてから提示されるまでの時間遅れがどれだけ起こっているのかについて,検討を行った.また,同時に情報保障者に提示されるキーワード等補助情報についても検討を実施した.その結果,聴覚障害学生に対する通訳情報の情報提示は,1画面に集約することなどの視線移動の軽減によってより学びやすい環境を構築できる可能性や,字幕作成のうちキーワードは構成担当者に有効であることなどが示唆された.
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