研究概要 |
高齢者の健康の維持・増進を図るために適度なレジスタンストレーニングの重要性が示唆されている.しかし,筋機能の低下した高齢者がレジスタンストレーニングを行うには,各個人の健康状態や運動能力を考慮した上での最適なトレーニングプログラム設定および機器選択が必要となる.本研究では,高齢者の運動能力に配慮したレジスタンストレーニング手法の確立を支援すべく,筋の詳細な筋機能情報を獲得することにより,レーニング時の筋活動状況や筋疲労状況を的確に把握し,その情報を定量値として訓練者にフィードバックする"運動機能評価システム"の開発を最終目標としている.本年度は,(1)静的運動時における大腿四頭筋の筋疲労特性,(2)動的な繰り返し運動時の運動リズムと筋活動の関係,について調査を進めた.(1)に関して,筋音図の振幅および周波数特性は,若年者よりも高齢者の方が疲労による変化が顕著であった.特に,低周波成分(10Hz~15Hz成分)の顕著な増加が認められた.この結果は,加齢による速筋線維の選択的減少を反映していることに加え,等尺性振戦の混入が顕著になったとも推測した.(2)に関しては,動的運動時における筋電図計測のための最適な電極位置を見つけ出すことに成功した.つまり,動的運動であっても神経筋支配帯の影響を受けない筋電図の計測が可能となった.しかし,加速度計による筋音図の計測では,関節運動による振動成分の影響が大きく,筋自体の振動信号を獲得することが困難であった.今後,計測用のセンサーの種類,および測定手法について検討を行う必要がある.
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