研究概要 |
他者とのコミュニケーションやジェスチャーの方法を学ぶ際に,相手の動作を模倣することが非常に重要であると考えられている.本研究では,ロボットシステムを用いて自閉児の動作模倣能力を向上させることが目的である.その目的に対して,体操のような音に合わせた動作を課題として与え,ロボットと自閉児がそれぞれ模倣を対話的に行うことによって,動作模倣能力や社会的なインタラクションの方法を獲得させることができると考える.そこで,ロボットと自閉児が対話的に課題動作の模倣を行うシステムを開発した.このシステムを開発するにあたり,1対のステレオカメラと色マーカを用いて人間の動きを模倣するためのアルゴリズムを新たに開発・実装した.また,子供の動作を評価するための手法を提案した.評価のために,体操のような複数の課題動作を用意し,それぞれに対して複数の人から見本となる動作データを取り,クラスタリング手法と期待値最大化アルゴリズムを用いた混合ガウスによる動作モデルを作成した.この動作モデルと自閉児の動作を比較することによって,自閉児の動作評価が可能となった.このシステムと評価手法を用いて,ロボットと自閉児がお互いに模倣しあうようなインタラクションを可能とるすシステムを構築し,天伯養護学校の生徒(10名)とその教員の方々の協力を得て観察実験を行った.実験の結果,自閉児たちはロボットに興味を持ち,インタラクション課題においても,ロボットの動作を模倣することが観察された.これは,自閉児の動作模倣能力を向上させることに寄与し,日常での社会的なインタラクションの方法を獲得していくことにもつながる.
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