本研究は、準備していた行動をこらえる・我慢する、という、ヒトが社会生活を円滑に行う上で重要な意志決定機能を反映する前頭皮質活動を、おもにGo/NoGo課題遂行中に記録した脳波から同定することを試みた。その際に、従来から行われている事象をトリガとした多数試行の加算平均波形(事象関連電位)だけでなく、単一試行脳波におけるパワーと位相のダイナミクスを詳細に検討した。その結果、NoGo試行における前頭皮質において、θ帯域の脳波には試行間で位相の一致したパワーの増大が、α帯域の脳波には背景振動の位相の急激な変化が、それぞれ確認された。NoGo試行の出現確率を操作して、「NoGoの意志決定」を行う確率を変化させると、α帯域の脳波の位相の変化のみが影響を受けることから、NoGoの意志決定は、α帯域の位相の急激な変化に反映されていることが示唆された。
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