本研究は行動性体温調節の原動力である『温熱的快・不快感』と自律性体温調節の効果器反応の関係とそれに影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的として、自律性体温調節反応と温熱的快・不快感の関係の検討(基礎データの取得)および温熱的快・不快感に影響する可能性のある要因についての検討(有酸素能・自律性調節能)に着目して研究を行った。実験は(1) 暑熱負荷実験(環境温を29度の温熱的中性域で30分安静にしてから60分かけて35度に上昇させその後60分暴露)と(2) 寒冷負荷実験(31度で30分安静に、その後60分で25度まで低下させその後60分暴露)の2条件のプロトコールで行い、被験者は健康な成人男性および55歳以上の高齢男性とした。成人男性を最大酸素摂取量で高体力群と一般群に分類した。高体力群は一般群、高齢者群よりも暑熱負荷実験中の発汗反応が早く、発汗量も多かった。温熱感、快適感とも高体力群、一般群には違いが見られなかった。一方、高齢者群は温熱的感覚が変化しているにもかかわらず、熱放散反応である発汗が始まるのが環境温変化開始後30分と遅いという結果が得られた。寒冷負荷実験では高体力群の胸部皮膚血管反応が一般群よりも早く、環境温の低下が始まった直後から減少した。高齢者は環境温の変化が始まる前から皮膚血流量の低下がみられた。冷却感はどの群も環境温低下とともに低下した。高齢者の中でも運動習慣等で体力の違いで比較し、その影響を検討する必要があるだろう。
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