研究概要 |
前年度のパフォーマンス検討の結果を基に18名の被験者を対象として行った. Fb-ERN振幅検討では, 被験者のパフォーマンスが誤っているというフィードバックを呈示した試行を抽出した. 加えて, 被験者の記憶の明確さに関する主観評定結果を基に4条件での比較検討を実施した. その結果, fb-ERNはFront-Central部位の電極において,被験者の記憶の明確さには関係なく, 自身のパフォーマンスが正しいと考えている場合に電位の増大が認められ, Holroydらの主張を支持した. これに対し, 間違っていると考えていた場合にFb-ERNが減弱することが認められた. ERNに関する検討では, 被験者が自身のパフォーマンスが間違いであると, 最も強く主観評定した場合のみ出現した. これらの結果から, 両電位の機能的差異を検討するために, ERN, fb-ERNについてその前後の時系列変化と両電位の発信源を精査した. その結果,予測段階で自身のパフォーマンスに関する評価が曖昧, 且つ正解と考えた場合に特異的な現象として右前頭-側頭領域の緩電位成分である刺激前陰性電位(SPN)の抑制が認められた. また, ERNとFb-ERNについて, 発信源の差異が認められERNでは眼窩前頭皮質の関与, Fb-ERNでは従来の知見どおり, Anterior Cingulateが発信源と推定された. これらの結果から, エラー回避は予測-評価段階に渡って客観的な正誤評価と主観的な正誤判定の重要度という二つの判断基準によって制御され, 一見同様な失敗後の行動変化は, 異なる制御機構による再学習の獲得過程であり, 両電位の機能的意義は異なるものと推測された.
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