研究概要 |
健康・スポーツ科学分野、スポーツ医学分野、身体運動科学分野において、古くから最大酸素摂取量(maximum oxygenintake, VO_2max)が有酸素的能力の評価指標として用いられている。しかし、VO_2max測定のためには最大運動負荷強度までの運動を被験者に行わせる必要があるため被験者への負担が大きく、また特別な測定機器を用いる必要があるため実験室で測定を行うことが不可欠である。臨床的および実践的な視点から、より簡便に有酸素的能力を評価する方法の確立が求められている。運動時の血中乳酸濃度の上昇点である乳酸性作業閾値は、最大下運動負荷強度の測定により求めることが出来るため、VO_2max測定よりも測定時の負担が少ないが、採血を必要とするため侵襲的である。本研究では、実験室以外において特別な機器を用いることなく簡便に測定できる呼吸数を指標として、乳酸性作業閾値に類似した運動強度指標を提案することを目的とし、個人で異なる有酸素的能力を体育授業という現場において簡便に評価できる方法の開発を目的とした。 まず、従来の研究結果との照合を行うために、平成19年度の本研究予算により呼気ガス分析機(ミナト医科学株式会社、AE-300ss)を購入し、数名の被検者について走運動による漸増負荷運動中の呼気ガスのデータ取得を行った。また、呼気ガスのデータ取得と同時に、血中乳酸濃度の測定を行った。 平成18年度から東京大学の新入生に対する授業内で、走運動による漸増負荷運動を行わせる実習を全学生対象に実施している。本研究の目的を達成するためにその実施データについて解析を行い、大人数で体育授業という現場において走運動時の心拍数と呼吸数との関係についてのデータを取得し、現在解析中である。
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