研究概要 |
本研究の目的は,他者との身体的地盤づくりを促進するための教科として「体育」を措定し,「自己-他者」間において身体的地盤が生成する理論的根拠を明らかにすることであった. 本年度は,前年度から引き続き,自己-他者の「身体的地盤」という鍵概念を「間身体性(メルロ=ポンティ,M.)」の議論を参考にしながら分析・検討した.メルロ=ポンティの間身体性の概念は,人間にもともと備わる生得的なそれの印象が強い.しかしながら,本研究課題から考えるならば,間身体性は生得的であると同時に,体育(身体運動の実践)によって後天的に育成されるそれでもあるということを論じなければならない.そのためには,間身体性が育成されるその構造について問う必要がある.そして,その構造を間うために,自己-他者の「かかわり」を「身体のかかわり(身体的対話)」としてとらえ直した.身体的対話において,自己と他者は互いの「身体的な感じ」をわかることになる.それは「心的な感じ」を交流させる「心的対話」とはまったく異なっている.心的対話によって間主観性は育成されるが,それは間身体性を育成するわけではない.間身体性は身体的対話によってのみ育成されるのである.これら身体的対話と間身体性の関係について論じた論文は,『Philosophy of Sport (Alun Hardmanほか編)』に掲載された.また,身体的対話において重要となる「身体的な感じ」とは何か(定義づけ)を探った考察は,本年度おこなわれた「国際スポーツ哲学会(IAPS)」において発表している..
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