研究概要 |
阿江ら(1996)、Dunlasらによって修正されたMcConville(1980)、de Levaによって修正されたZatsiorsky and Seluyanov(1983)の推定法を用いて慣性パラメータを推定し(それぞれ、以下AE、MC、ZAと記す)、Top-down法とBottom-up法で算出した体幹下部に作用する力とトルクの差を逆動力学計算の信頼性の指標として求めた。体幹の側屈、屈伸および回旋のトルクのRMS差は、何れの慣性パラメータを用いても10Nm以下であった.トルクの最大値の差は、30Nm以下であった。全体的には、ZAとAEがMCより優れていた。 スポーツ動作における体幹の逆動力学計算の信頼性を調べるために、大学男子テニス選手6名のテニスのフォアハンドストロークについて、体幹の基本動作と同様に逆動力学計算の信頼性の指標を求めた。体幹の側屈、屈伸および回旋のトルクのRMS差は、20-40Nmであった。全体としてはAEが優れていたが、それでもトルクのRMS差は大きく、信頼性は高くないことが示唆された。 体幹の基本動作で示されたRMS差は、先行研究で示されたリフティング課題に対する結果と同程度であった(Plamondon, 1996)。このことは、体幹が剛体と仮定できない運動においてもそのことにより逆動力学計算の信頼性が低くなることはないことを示唆する。テニスのフォアハンドストロークにおける結果が、体幹の動作分析結果に比べて悪かった原因は、体幹の動作分析実験に用いたViconの動作分析システムの位置決定精度がテニスのフォアハンド実験で用いたビデオカメラの精度より高かったためとフォアハンドストロークでは前脚の着地の衝撃によってマークの骨に対する相対的動きが生じたことや肩甲骨の動きがみられたためである可能性がある。精度の高い動作分析システムを用いてこれらの影響を検証する必要がある。
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