本研究は、各部位の筋の運動に対する貢献の違いに着目し、各部位の筋トレーニング、脱トレーニングの影響を、組織・生化学的手法を用いて筋線維レベルで詳細に調査することを目的としている。平成19年度は、各部位の筋の特性に関する基礎データを得るため、6頭のサラブレッドのオートプシーサンプルを用いて、全身の48か所の筋を組織・生化学的に分析した。その結果、前躯にはtype IおよびIIA線維が優位な筋が比較的多く見られ、後躯ではtype IIAおよびIIX線維が優位な筋が多いことが明らかになった。これらの結果は、常に全身の6割程度の体重を支持している前躯と、走行時の推進力を生み出す後躯の機能的な違いを、よく反映したものであると考えられる。 オートプシーサンプルによる分析結果をもとに、筋線維組成や酵素活性、サンプリングの容易さ(筋の大きさや位置)等を考慮して、前躯の上腕頭筋、体幹の最長筋、後躯の中殿筋および半腱様筋を、今後の調査の対象とする筋として選択した。1年齢(18〜20か月齢)の8頭のサラブレッドを被検動物として、前述の4か所からニードルバイオプシー法によって筋サンプルを採取した。採取したサンプルを用いて、組織・生化学的手法および電気泳動法を用いて、筋線維組成とミオシン重鎖組成、酸化系・解糖系の酵素活性の酵素活性を測定した。 現在までに、発育やトレーニング、脱トレーニングが中殿筋に与える影響については多くの研究がなされているが、これらの影響を全身の筋について検討した研究はほとんどない。平成19年度中に本研究において得たデータは、今後、全身の筋のトレーニングや脱トレーニングを調査していく上での、コントロールデータとして非常に重要な意味を持つと考えている。
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