本研究の目的は、クロスカントリースキー(C. C. スキー)のレース展開で特に重要であるスーパースケーティング走法(SS走法)とクイックスケーティング走法(QS走法)に関して、その力学的特性を解明し、技術評価と最適動作の検討を行うことである。解析では3次元動作分析に加え、左右のポーリングカ、スキーキックカの力量計測を行い、身体動作と推進力、滑走速度の関連性を検討する。現時点までに、動作分析および力学分析の計測手法を開発し、トレッドミルを用いた実験室内での計測・分析を行った。被験者にはトレッドミル上で、一定速度で斜度条件を変えてSS走法を課した。動作分析では、三次元動作分析からスキー開き角とポーリング角を算出し、力学分析では、圧力センサおよび歪みゲージを用いてキック力とポーリングカをそれぞれ計測した。その結果、SS走法においては、斜度の増加に対してスキーによるキック力を変化させずに、スキー開き角を大きくすることで、キック力の推進成分を大きくして対応していることが示された。一方で、ポーリング動作に関しては、ポーリング角を変化させることなく、ポーリングカを増加させることで対応させていることが分かった。このことは、SS走法では斜度増加によって大きくなる負荷に対し、上肢の力発揮に高く依存していることを示唆している。以上の結果より、C. C. スキーでは、上肢と下肢で推進力発揮の戦略に違いがあることが示された。
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