クロスカントリースキーのスプリント系レースの展開で特に重要な走法であるスーパースケーティング走法(V2スケーティング)ついて、登坂時の力学的戦略をバイオメカニクス的に分析した。計測に先立って、滑走時における主な推進力を発揮するポーリング力とスキーキック力を定量計測する装置のシステム構築を行った。ポーリング力の検出には、軸対称の歪みゲージ法を用い、スキーキック力の検出には、フットセンサーを用いた。登坂の斜度条件を規定するため、トレッドミルを用い、斜度を3%から11%まで、2%毎に増加させた。被験者にはローラースキーを使用させて滑走動作を課した。力学計測と同時にビデオ映像による3次元動作分析からポーリング角、スキー開き角を算出した。各計測項目について斜度条件間で比較した。そして、以下に示す結果を得た。1.斜度増加に伴って、スキー開き角とポーリング力については有意に増加した。2.ポーリング角とスキーキック力については有意な変化は見られなかった。3.斜度増加に伴うピッチの増加は見られなかった。これらのことから、斜度の増加に対する上肢のポーリング動作と下肢のスキーキック動作にはその対応方法が異なることが分かった。つまり、ポーリング動作では力の作用方向(ポーリング角)を変えず、その大きさ(ポーリング力)を変えて対応し、スキーキック動作では、力の大きさ(足底圧)は変えず、作用方向(スキー開き角)を調整することで推進成分を調整させる戦略を行っていると考えられた。
|