本研究の最終目的は、オープンスキルを要するスポーツ状況において、競技者のパフォーマンスを左右する予測能力向上を目指した知覚トレーニングを開発することである。その第一段階として、サッカーにおける対戦相手のキック方向を予測するディフェンス選手を研究対象とし、眼球運動測定実験をシミュレーションおよびフィールド上で実施した。熟練者グループには大学体育会サッカー部を、非熟練者グループには一般大学生を採用し、両グループの眼球運動データを比較した。その結果、熟練競技者に特有の視線移動パターンを時間的・空間的に記述することができた。さらに、シミュレーション実験状況において、刺激提示サイズ等を実際のフィールド実験状況に近づけることで、両実験状況において、同様な視線移動データが確認されたことから、シミュレーション状況にてフィールド状況を再現可能であると判断した。よって、第二段階以降、シミュレーション実験状況において、刺激提示映像を加工し、視覚情報を時間的・空間的に遮断することによって、予測に重要な要素(身体の部位・タイミング)を明らかにし、特有の視覚探索ストラテジーを明確に記述する。また、キック動作のモーションキャプチャデータを利用し、CGアニメーションを作成し、時間的・空間的な遮断映像を試作中である。これまでの視線移動データで示された中心視による情報収集に加え、動きや位置関係を把握する周辺視による情報収集について議論が可能になると予想される。
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