研究概要 |
これまで、サッカー(Nagano et al.,2004,2006)、野球(Kato & Fukuda,2002)、ゴルフ(Naito et al.,2004)、バスケットボール(久米,2001;落合,2004)、ラグビー(上野,2005)といった各種スポーツ競技の実践的なプレー状況において、周辺視システムの機能を有効に活用するような視覚探索ストラテジーが示されてきた。その知見を踏まえ、本研究では、刺激映像を時間的に遮断する方法、空間的に遮断する方法を用いることで、競技者が利用可能な視覚情報について、「いつ(when)」、「どこに(where)」視覚的な注意を向ける必要があるのかを解明することを試みた。プレーの予測正確性がパフォーマンスを左右する状況(オープンスキル遂行状況)において、重要な情報を「どのように(how)」収集しているのかを明確にするために、下記の特定の状況において実験を行った。サッカーのペナルティーキックをセーブするゴールキーパー(被験者)が、対戦相手のキック動作のみからパス方向を予測するという比較的、視覚情報の少ない状況を設定し、競技者の予測に関わるストラテジーを記述した。また、対戦相手のキック動作をCGアニメーション化し、各部位(上半身、下半身、右半身、左半身)のみを可視化し提示する空間的に遮断する手法を確立した。CGアニメーションを用いた視覚情報遮蔽実験では、熟練者は制限された時間及び空間の情報から効果的に予測をしていることが明確となった。さらに、空間的な遮蔽なしの状況において、非熟練者に特定の部位のみを意識的に観察させたが、その予測能力に向上は見られなかった。よって、どこに視覚的な注意を向ける以上に、どのような情報(先行手がかり)を収集するかが重要となることが示唆された。 今後、効果的な予測を促すための映像提示方法を提案するとともに、そのような映像を用いたトレーニング効果を検証する必要がある。
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