1、動機、目的 競技力を客観的に評価することは、トレーニング手段を設定していく上で不可欠である。その競技力の決定因子としては、体力的要素やメンタル的要素、そして技術的要素のほかに、戦術的な要素もあげられ、競技種目特化の評価指標を持つことは、合目的的なコーチングのためには急務であるといえる。 そこで、本研究では、ハンドボール競技における個人戦術能力を科学的な見地で評価するために、個人レベルの戦術的運動経過を主体としてみた、運動学的な構造を明らかにすることを目的とした。具体的には、攻撃における個人の防御突破場面での構造分析と、防御における突破に対する個人行動の構造分析を行うものとした。特に今年度は、その基礎的位置づけとして考察した。攻撃および防御局面における個人戦術的能力を検討するために、実験を行い、バイオメカニカルな手法を用い、データを得た。なお、解析には、Frame-DIAS(株式会社DKH製)を用いた。 2、主な結果及び考察 (1) 攻撃における再現性 データの検討により、攻撃局面におけるの個人戦術的能力に関して、再現性の重要性が示唆された。 (2) 防御局面における対応の多様性 防御局面の戦術的能力おいては、対応の多様性が、重要であることが示唆された。 3、まとめ 戦術的能力の客観的指標作りとして、対人関係を含む運動経過の定量化を試みたが、攻撃、防御の局面における決定要因の違いが見られた。 実戦的な場面においても、同様の傾向が見られ、実験的状況に限った傾向でないことが示された。 今回の客観的評価の試みと、パフォーマンス能力の関係が見られたことにより、今後の更なる検討の価値が見出せた。
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